新田診療所
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小さい頃を思い出してみましょう。幼稚園とか、小学校低学年の頃を・・・。たとえば7歳のとき、あなたは毎日、あるいは時々の行動をどうやって決定していましたか?先生に言われたとおりに?誰かがやるのを真似て?

それでは近くに誰もいなかったら、しかも慣れていない場所だったら、あなたはどんな風に行動を決定していたのでしょう?そんな時、多分あなたの身体は硬くなっています。不安で一杯です。神経細胞は興奮の値を十分の一にも引き下げるので、ほんのちょっとの刺激にも激しく反応してしまいます。

あなたはお母さんの助けを得ようと、大声で泣き出したかもしれません。 どうですか、イメージは大体こんなものでしょうか?とにかく、この頃のあなたは自分の意図とマッチした行動を、自由自在にやれはしなかったはずなのです。

それでは「今の自分」はどうですか?もしもあなたが18歳だったら、時々は迷うことがあっても、「そこそこは自分で行動できてる」と感じているでしょう。そしてあなたが34歳だったら、「何もかもがスムーズに過ぎている」のではないでしょうか。

考え事をしていてハッと気がついたら会社についていたり、背中にふと殺気を感じ、考える前に木刀の一撃をお鍋のふたで受けて、「お見事!」なんて土下座されたりしていませんか?(笑) ともかく、あなたは何の苦もなく、頭?も使わずとりあえず自分が望んだ(と思っている)行動が出来ているわけです。

7歳から34歳の間に、いったい「何」があなたに起きたのでしょう。行動できなかったあなたにスムーズな動作の連続発現を可能とさせしめた、時には考えなくても(むしろその方が上手に)合理的な行動をとらしめるのはどんなメカニズムなのでしょう?


1983年、神経生理学者Libetの実験が、神経科学界で大論争を呼びました。彼は随意運動について「被験者の意識的な意図より0.4秒程度先立って、脳は運動の神経過程を開始する」と主張したのです。途方もないことでした。

「膝蓋腱反射など特殊なものはあっても、意図することなく随意的な行動が企画されるはずはない。」そう我々は信じています。ところがLibetは唐突に「随意運動の神経過程において、意識は出発点でなく中間過程で生じる。意識の役割は、無意識に始まった運動のための神経過程をそのまま遂行したり、中止させたりすることだ。」という実験結果を突きつけた。

そしてそれは、意識の万能性を前提とした社会構造にも警鐘を鳴らしたのです。我々は自由意志で行動を生み出せるわけではなかった。脳内に無意識に準備される運動のための神経過程が、一定の電位を超えた後に意識に伝わる。すると大抵は「その運動が自分の意思だ」と感じ、「自分は思うがままに行動している」と信じ込む。

我々は大いなる誤解の上に社会を築いていたのです。 すると、ここに重大な疑問が生じます。意識が先導でないなら、脳はどのように、何を目指して何のメカニズムで運動を構築するのでしょう。運動の無意識の選択に強い影響力を及ぼすのはどのような要素なのでしょう。

残念ながら、現時点では発生のメカニズムを確定することはできません。それは21世紀の人類の大きな宿題となるでしょう。しかしながら、日々大発展している「脳と心」に関する研究成果は、現実社会で観察できる現象の後押しを受けて、相当に正確度が高いなと思える仮説を生み出しています。

ですから、もはや脳はブラックボックスではない。だから、脳の活動である自身の言動に不合理性を感じている場合、それを「あるがままの私」などと卑下し、擁護し、強化、固定化させてはなりません。積極果敢に、社会生活の中で仮説をベースに地震のコントロールシステムを捉え、これに働きかけ、より自由で創造性にあふれた人生に修正していく。今はそんな時代の幕開けなのだと思います。


では、無意識過程の運動プログラム成立に強い影響力をおよぼすモノは何か?を検討します。意識が制御していない以上、入力と出力間に介在する不確定要素はほとんどないのではないかと考えられます。

つまり計算過程は反射的、非知性的であり、ありえないことですが、内外ともまったく同じ場面、要するに脳内に数百種類もあると思われる影響物質の濃度バランスと、五感から入る信号の組み合わせが同じなら、同じ運動が準備されざるを得ないのです。

そしてその場合、以下にあげたものは特に影響大であろうと思われます。それらの組み合わせが同じようなら、同じような運動が準備される。当然逆も真なりで「組み合わせを変化させれば異なる運動が準備される」ことも成立します。影響要素は多い。しかし、強い影響力を持つ要素を変化させることで、セルフコントロールは容易になるのです。

○外部環境・・・五感から入る情報。ただし、無意識に捉えられるモノが多い。
○内部環境・・・自律神経バランス、ホルモン、「欲」に関する神経細胞の興奮状態など。
○運動記憶・・・かつてしたことのあるモノ。内外の環境が近似しているモノほど発生しやすい。

以上の影響要素を変化させ、組上げられる運動プログラムを合理化させたい場合、外部環境をいじるのは最終手段でしょう。現在の活動の場から逃げる選択肢が選べるなら、すでに実施済みのはずだからです。ですから、合理化は残りの項目への働きかけとなります。


結局、運動は主に無意識に捉えた内外の情報を基として無意識に準備が始まり、途中で意識化し実施される。それが随意運動発現の基本的な流れです。この流れのままに進行するなら、ストレスは最小になります。

なぜなら、流れを止めると不快感が生じますが、それはそのままにしておけばやがて消失するモノです。しかし、人間はその不快感を「私はかくがくしかじかで不快なのだ」と個人的価値観で解釈し、ストレッサーとして具現化し、記憶してしまいがち。それが何度も思い返されるうちに、強いストレスとなるからです。

実社会において、社会通念やら上司の意向やらが意図的判断を支配し、自然な運動プロセスは「やりたいけど誰もやってないし・・・やめとくのが無難」と中止される。これが続くと、意識的コンとメール機構は疲労してしまいます。自動操縦に任せず、集中して質の高い意識的操作を継続できる時間はせいぜい90分間でしょうか。

疲労が限度を超えれば機能不全となります。すると、鬱になるか?爆発するか?心身症か?の選択を迫られることになるのです。そうなってしまわないように、貴重品である「集中力」は創造的活動に振り向け、それ以外の活動は自動操縦お任せする。

そして、安心してお任せするには、準備される運動が調和的でなければならない。そのためには内的環境から「不安感・攻撃性・恐怖感」などマイナス要素を上昇させるモノを抑制しておく必要があるのです。

ところが、人によってはまったく見当違いな対応をしてしまうことがあります。仕事を遂行する上で、とにかく高効率だけを求められる環境であると、場に適応するため仕事に集中しようとする。

しかし、人間は機械ではありません。内部環境、特に「欲」が渇望感を発生させ、それを解消させるための運動プログラムが自動的に準備されるのです。この本質的な流れを中止するのは不快です。不快でも不快でも中止し続ければ、ついには激情にかられることになります。それがつらすぎるということで、「感情が出ないように、出たとしても感じないようにしよう。無視しよう」と努めてしまうのです。

そして、実際に内部環境情報が解り難い状態になってしまいます。こうなると身体を一定の状態に保ち健康を維持する機能、自律神経も免疫も失調します。身体言語に不一致が多くなり、信頼されなくなります。親友も恋人もできにくくなります。

ルーチンワークで評価とれたとしても、私生活は空虚になります。単能機械としては優秀でも、生き物としてはボロボロになるのです。かくして、人間が人間たるに値する「創造性」は干上がってしまい、「自分以外の何かに急き立てられるように生きる」ことになってしまうのです。



良好なセルフコントロールは、我慢することではなく生物学的に自然な振る舞いを基本とすることで成立します。それは、五感わ鈍磨させず鋭敏な状態に保つことです。そして、自然でありながらも「愛される社会的存在」であるために、日々副交感神経優位モードで生きること、自分自身と仲間を正面から受け入れることです。

人は愛されてこそ健全たり得る。そうあり続けることで「心のおもむくところに従えど則を超えず」の境地が拓かれていくのです。



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