新田診療所
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■呼吸と形が行動を固定する!・・・「登校拒否」を脳構造から考える
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全国的に登校拒否児童が急増していると言われています。なぜ「全国的」なのでしょう?

「生活環境が変化したからでは・・・」はい、大いに関係するでしょう。それではなぜ「全国的」に同様な環境変化が起こり、「全国的」に同じ行動異変が増加するのでしょう?

私はそこに生物学的なメカニズムを見るのです。生物の生得的な構造、行動パターンがその現象のベースになっていないのなら、後天的な学習によって築かれる十人十色の価値判断システムによって相殺され、もっとマイルドな傾向しかありえないからです。

ここ十年の脳科学の爆発的な進展により、ようやく「脳と心」の関係が明らかになってきました。もはや脳はブラックボックスではない。精神現象は経験則や恣意的な理論にゆだねることなしに、生きている実体の構造を踏まえて説明されなければならないのです。

以下に臨床結果を最新脳科学で理論付けた、登校拒否メカニズムをご紹介します。


○原因は言語化されない
学校に行けない理由、それは「登校できないほど強い不快感が発生するから」です。不快感は言語機能のない「偏桃→視床下部の興奮から誘発する物質」によって生じるらしいのですが、「どの情報が不快感を出させたか」を正確に認知できる脳の構造はありません。

つまり、我々は推測で原因を決め付け、推測に現実を合わせ込んで生きているわけです。だから「なぜ?」と聞いても回答は正確でない。本人にも解らない。結局、関係者が誠心誠意回答に対応しても登校には結びつきがたい。

因果関係は言語レベルでは確定しないのだから、たとえ正確に分析できたとしても真実はそこにない。登校できたとすれば、それは言語的条件ではなく、受容欲求の充足であった可能性が高いのです。要するに「僕は(私は)受け入れられた」と快を感じ、リラクゼーション反応が生じたわけです。

ともあれ、「嫌な感じがして行けない」という理由を認めましょう。実際のところ、ストレスフルな状況下で、本人が正確に認知できるのはそれだけです。


○自己制御の幻想
「真剣に意識すれば、人間は自身の行動を自由にコントロールできる。できることが一人前の証だ」という暗黙の了解事項が社会を席捲しています。しかし、これには科学的根拠がありません。

意識は、行動プログラムに関わる脳部分の活動電位が一定値を超えてから(約0.4秒後)それを知る(リベット、1983年)。そしてそれを選択し、実行状態をモニターするのが通常の仕事です。ほとんどの場合、意識は活動の起源ではないようです。

このことは、かのフロイトも明言していますが、それこそが彼の実績中最高の成果でしょう。脳科学者の間では、人間の行動が「遺伝的要素と内外からの情報と個人的に学習された行動パターンだけで(つまり意識はまったく関与しないで)構築される・・・とするのは極論だろう」といった認識だといわれます。「意識は人間の行動プログラミングの管理者ではない」ことは科学的には常識なのです。一般に知られていないのは単に啓蒙不足なのです。

とにかく現象的に、身体の内部と外部の環境条件に適した、基本的に「やったことのある」プログラムだけが「意識以前に」準備される。だから自由自在な行動などありえない。新しい行動はぎこちない試行錯誤の中から、いたって緩慢にしか立ち上がらないのです。

特にストレスフルな状況では、創造的活動にふられる容量は大幅に削られます。「頭では解るけど、できない」という訴えを尊重しましょう。意識はストレスによって抑制力を失い、自己防衛能力が導く回避的な行動プログラムしか実行されなくなるのです。


○人を制御する三つの脳
人間は「爬虫類的な脳幹」、「哺乳類的な大脳辺緑系」、「人類特有の大脳新皮質」のそれぞれからコントロールされています。通常は前頭前野が抑制力で他の脳の感受性を制御しているようです。しかしストレスフルな環境では、他の脳(扁緑系や脳幹)の活動が抑えられないほど過剰になり、相対的に抑制力が失調します。

そこで、特に問題となるのが辺緑系→脳幹の受け持つ「同種の個体を、同化適と異化適に分別し、対応を変化させる動き」の過剰反応です。「同化」は仲間であり、助け合い愛し合う存在です。

一方「異化」はよそ者であり、攻撃あるいは回避する存在です。それには斥力が起こり、交感神経の活動が優位で、緊張して不快感が生じます。さらに同化反応は相手の同化反応を喚起し、異化反応は異化反応を喚起します。

また「同化性」は見た目の副交感真意優位的表現レベルと共通性、例えば同じ行動、同じ服装、同じ考え方、同じコミュニケーションスタイルなどが判断基準となります。これから外れた者は「異化」として仲間はずれ、いじめの対象になりやすくなります。この分別したい衝動はその絶対値ではなく「環境をどれほど強いストレスと認知するか」によって増減します。

このように、どんな人にも「いじめたい心」を生み出す脳が備わっていることを理解しましょう。人間は攻撃性を身に付けたから自然淘汰されなかったのです。そして攻撃性や不安感のレベルは一定ではなく(つまり、性格と呼ばれる堅牢そうな構成概念なんかじゃなく)、身体の内部情報と外部の環境認識によって自動的に増減するのです。

登校拒否急増の原因を個人の特質に帰するのは本質的でない。競争原理に蝕まれた社会で生き残るために「攻撃性や不安感を上げよ!」と、正常な機能が命じた結果なのです。


○学習される不快
多くの動物には、生き残るために危険をできるだけ早く察知し、回避行動を起こさせるメカニズムがあります。それは情報を時間をかけて精密に分析するプロセスに先駆けて、千分の数秒で情報の生物学的価値判断(接近適?回避適?)を行い、回避適には不快感を発生させる「扁桃→視床下部」ラインです。これが発生し、事態が「回避適」と意味づけられてしまうと、その後の精密な分析も意味付けの影響を受けて進行します。

つまり分析は客観的でなく、その意味を証明する方向へとカテゴリーが選択され、色づけられて意識へ送られている。ひとはそれぞれ同じ風景から異なった意味を引き出しているのです。

生物学的判断そのものは大脳辺緑系の扁桃で行われています。個々の判断は、記憶に関わる神経細胞群の興奮によってなされますが、この記憶には生得的なモノと学習によるモノがあります。問題となるのは当然後者です。もし、学校のようなものが生得的に不快ジャンルなのであったらば、文化の伝承もままならず、人間は猿と変わらない生活をしているでしょう(というより、ホモサピエンス自体が存在しなかったかも・・・)。

登校拒否とは、学校生活の何か(多くは人間関係)が(そのときの不安感受性レベルの下では)限界以上に強い不快ジャンルとして記憶されたケースなのです。

そうなると学校に関わる情報が入力されたとき、扁桃は反射的に不快判定をし、その連絡を受けた視床下部は不快感を催すように働く。意識以前にまず「不快」が生ずるのです。するとその不快レベルが高いほど回避衝動、学校から離れたい感じが強まり、それに準じたプログラムだけが強く興奮。ストレスで脆弱化した意識の抑制力を打ち破り、選択の余地なく実行されることになってしまうのです。これは意識的コントロールを逸脱した現象なのです。意識は全能でなく、せいぜい拮抗する勢力の一方、雇われ社長なのです。

もちろん「学校は回避適だ」と感じるのは不合理です。しかしこんなときには「不合理な思考をスイッチする役目の脳機能が過興奮して失調し、これを制御できなくなる」ということが報告されています。つまり不合理な考えを変えていくメカニズムが機能しなくなっている。

だから行動が固定化されるのは構造的に必然なのです。本人が自由意志で選択できる問題ではありません。この構造を無視した不適切な働きかけは、本人の自己評価をさらに低下させ、学校→不快という反射的応答をより強化しかねないのです。


○改善へのアプローチ
このように、登校拒否のメカニズムを掴みました。あとはそれに沿って進行するプロセスを変更させ、「学校は接近適、少なくとも回避適ではない」という自動判定を確立させればよい。ストレスの強度は情報そのものとは相関しません。本人の解釈で決まるのです。

ここで一つ重要なことがあります。それはどのような方法でアプローチするにせよ、「何をするか?」より「どのようにするか?」が優先されなければならない・・・ということです。

完全に解決したときの子どもは「自分が好き」で「セルフコントロール感」が充分にあり「外向的」で「リラックス」しています。基本的に子どもの状態がこの方向に向かうように接触していくことが、働きかけの成否のカギを握るのです。手順は次のとおりです。

1)好感神経の過剰興奮の沈静
交感神経の過剰活動は「異化応答の表出」、「不快感の発生」、「行動様式の固定化」などが原因となっています。自律神経は呼吸、循環、消化吸収などの働きがそれぞれ相互作用連結しています。ですから、唯一随意に変化させられる呼吸を、強制的に(意識的に)副交感神経が優位なときの活動状態(ゆったりとした腹式呼吸)に「20分以上」保持してやると、身体全体がそれに引きずられてリラックスした状態になります。

2)異化的姿勢、恒常的筋収縮の矯正
ストレスフルな心情は異化的姿勢、特定な筋肉の収縮を起こします。収縮が長引くと、収縮を意識化する経路に抑制がかかり、意識できなくなります。するとその筋肉は不随意化し、ストレッサーへの高感受性と危機認識を持続させます。そこで姿勢を矯正し、筋収縮部を弛緩させます。すると原因ストレスは消散し、真のリラックス状態になります。

3)言語的アプローチ
ようやく言語の出番、意識が行動プログラミングに影響を与えることができます。彼はもはや、次々に湧き上がる行動衝動の奴隷ではありません。「今」、「この場」の情報を処理過程に取り込む準備が整いました。これを「気付き」といい、もっとも創造性が発揮されやすい状態を指します。彼の「自発性」を引き出すアドバイスを!自発的な外部への働きかけが、外部からのフィードバックを効率的に取り込ませ、有効利用させるカギなのです。


<注意すべき点>
苦しんでいる子どもに対し、今、ここでもっとも影響を及ぼし得るのは何といってもお母さんです。不登校の原因を外部に求めることに夢中になってはなりません。他人を罰するより我が子を「心から」愛することです。それに原因視しがちな事柄は、多くの場合、単なるトリガーにすぎないのです。内因を改善せずして解決の道はありません。

苦しむ子どもを救うには、自律神経の過剰活動を沈静化させる情報を発信するのだということはすでに述べました。そして、その最有力な発信者は、お母さん。それも非言語コミュニケーション要素が肝心なのです。これには構造的な根拠があります。

どうか、あふれるような愛情をもって、リラックスして接触してください。不確かな言語より、例外のない子どもの無意識の感情表現に、ぜひ焦点を当てて対応して欲しいと思います。



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